去年10月に福島市で行われた「市民講座〜本音で語る広場〜」の後で
セカンドハウス「ここさこらんしょ」を訪れてから、約半年。
1年を振り返る集いが今日3月31日に福島市の「ここさこらんしょ」で
開かれました。
「ここさこらんしょ」には、双葉町から避難している石田さんご夫妻が
10月から住んでおられますが、この3月からかわいい家族が増えました。
双葉町の自宅に取り残されていた飼い猫の「ふじちゃん」が救助され
ようやくこの家に帰ってくることができたのです。
ハスキーボイスのふじちゃん♂
可哀想に、泣き続けたせいか声がつぶれてしまっています。
でも、ようやく寛げる我が家と懐かしい家族のもとに戻りました。
とても人懐っこくて「ふじちゃん、良かったねぇ」となでると、
喉をならしてすり寄ってきます。
石田のお父さんもふじちゃんが行くと、表情がゆるみ、
時々声をかけることもあって、家族の一員として
喜んで迎えていることがわかります。
本当に無事戻ってきて良かった。
今日集まった人は、石田さんご一家を含めて26人。
挨拶をされる石田さんのご長男政幸さん
お父さんの病院関係者、ケアマネジャー、大学の先生や大学院の学生
これまでボランティアナースとして来られたみなさん。
そして地元で、ここの立ち上げに尽力されたTさん、
東京の在宅看護研究センターの村松代表とナースの皆さんが駆けつけ、
私のように村松先生に引き寄せられるようにやってきた
四国の高校の先生と息子さんとご近所の方々。
「ここさこらんしょ(ここにいらっしゃい)」の言葉どおり、
この場所に集い、再会と出会いの喜びが家じゅうにあふれています。
昔ながらの親類縁者の集まりのよう
石田さんがここにご入居される前日、女5人でわくわくしながら
最後の準備をした日には、今日のこんなにぎやかな光景を
想像することはできませんでした。
明るい光が差し込む部屋いっぱいに人が座り、
テーブルには石田のお母さんの心づくしの手料理が並び、
そこここで挨拶が交わされて笑い声があがっています。
石田のお母さんの料理は最高!
「明日からここで在宅での介護が始まる」
緊張感にふさわしい秋の日の朝から、この陽光あふれる春の日までに
どんなドラマがあったのでしょう。
私は村松先生が起こした奇跡を目の前に、胸いっぱいになって
皆さんの笑顔に酔ったようになっていました。
ご近所の皆さんが「福島の県民としてお礼を言いたい」とご挨拶をされて
何もできない私は、それだけで申し訳ないような気になり、
せめてこのことを伝えようと心に決めたのでした。
県民を代表?!してご挨拶♪
村松先生は、ここをもう1年継続するためにいくつもの申請を行い
2年目を継続できることが決まって表情も晴れやかです。
いつもながらの人をとろかすような笑顔で周囲には常に人の輪ができています。
石田のお母さんはお父さんの世話をすっかりナースさんたちに任せて、
皆さんの接待に大忙しです。
半年前の市民講座でお目にかかった時よりすっかり明るくなって、
最初玄関で迎えていただいた時には別人かと見間違うほどに
活き活きしています。
この石田さんのお母さんとお父さん、そして長男の政幸さんのお話は
後でゆっくりとすることにしましょう。
石田のお父さんは、ここへ来たときには体調も悪く、嚥下の力も落ちていたので
結局胃ろうによる栄養補給をすることになりました。
でも、その後この家で暮らすようになってからは、徐々に体力も戻ってきて、
今日はミキサーにかけた食事を車いすに座って自分でしっかり食べています。
隣に座っていた看護師長さんが
「やっぱり在宅の力はすごいわねぇ。半年前は自分で食べるなんて考えられなかった。
本当にお元気になられたわ…」と感慨深げにお父さんを見つめています。
ここは石田さんにとって自宅ではありません。
でも、ご近所の顔なじみができ、気心の通じた看護師さんのお世話があり、
自宅のような自由な暮らしがあることで「在宅介護」の良さが引き出せるのでしょう。
師長さんの複雑な表情から、病院での看護の限界と闘う人の苦悩と
患者への思いやりが見て取れました。
こういう看護師さんたちがいるから日本は大丈夫なんだと、
またひとつ大切なものが増えたような気がしました。
話は尽きることなく、台所、お父さんの居室、居間といろんなところで
数人が集まって話をしているところは親類の集まるお祝いの席のようでした。
夕刻、伝えきれないほどの想いを抱えてそれぞれが帰っていきます。
今日残るのは、四国のKさん親子とナースのHさん、私の4人です。
この日に「ここさこらんしょ」に来た私ってえらい。
だって、こんな素晴らしい時を過ごすことができたのだから。
村松先生にまた会うことができたし、お話もできた。
懐かしいナースさんたちにも再会できて、本当に良かった。
きっと、今日ここに集った人たちがみんなそう思っていると信じます。
再会を約束して、元来たところへ戻っていく人々。
でもここにもうひとつ帰る場所が増えたのです。
セカンドハウス「ここさこらんしょ」は心のよりどころ、もう一つの我が家だから。
また、きっとここで会いましょう。
村松先生と石田さん親子を囲んで記念撮影